90年代初頭、バブルが過ぎ去り人々の暮らしが様変わりを始めた頃、そのバブルに踊って開発された複数のF1エンジンが行き場を失った。そのためか否かはわからないけれど、F1エンジンを搭載したスポーツカーが、少なくとも日本では複数作られている。それらはまじめに量産を考慮したものもあれば、単にコンセプトとして終わったものもある。
●ロンドン郊外で発表されたヤマハOX99-11
その一つがヤマハOX99-11である。このクルマは1992年にロンドンで初公開されたものだがそのエンジンベイに搭載されていたのがOX99と呼ばれるエンジンであった。
●OX99エンジン
●リアからの眺め。そのサスペンションアームに作りと言いまるでフォーミュラカーだ。
このエンジン元々はF1用に開発されたもので、91年シーズンに当時のブラバムBT60に搭載されてF1を戦ったもののデチューンであった。
●前から見たOX99-11のシャシー。まさにF1
ヤマハのF1活動はそれ以前の1989年から始まっていて、この時はV8エンジンをザクスピードに供給して参戦していたが、成果を上げられず、1年のブランクを経てV12のOX99を開発した経緯がある。
F1参戦と同時期に開発されていた関係から、ヤマハは本気でこのクルマを市販するつもりだったのだろうが、やはり時代が悪すぎた。価格は当時でも1億円を超え、バブルが消滅した時代背景からは恐らく考えられないくらい高価なものだったように思う。
発表会でこのクルマをドライブしたのはジョン・ワトソン。長くブラバムで活躍したドライバーだったからの登用ではないかと思われた。因みにヤマハエンジン搭載のブラバムをドライブしたのはマーチン・ランドルとマーク・ブランデルの二人である。
●クルマに腰掛けてシャンパングラスを掲げるジョン・ワトソン氏
OX99-11と名付けられたこのクルマはそのベアシャシーからもわかるように、ほとんどF1にルーフの付いたコックピットを与えたような作り。ボディのデザインは由良卓也氏。発表会の場にも彼の姿があった。車体の中央にドライバーズシートがあり、そのいで立ちはまさにF1。しかし、ドライバーの左サイドやや後方にはもう一つのシートがあり、一応タンデムの二人乗りとされている。実際に発表会の場では女性がその席に収まってみたものの、やはり窮屈そうなのは見てもわかった。
●一応二人乗りであることがこの写真からわかるが、かなり無理がある。因みにガルウィングのドアは一つだけ。このようにしか開かない。
●発表会の風景。車両後方に由良卓也氏の姿がある。
結局3台が作られただけでプロジェクトはキャンセルされた。2016年には袋井のテストコースを走行したOX99-11の姿がネットに掲載されていて、現在も恐らく3台すべてが保存されているはずである。
●コックピットに収まるジョン・ワトソン氏
●前後に大きく開くカウル