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Channel: モータージャーナリスト・中村コージンのネタ帳
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昔話を今に:私はこれで…BMWが好きになりました

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 大学時代に始めたアルバイトが二つ。一つはノバエンジニアリングという会社でのレースメカニックの丁稚。そしてもう一つがローデムコーポレーションという、並行輸入車を扱う自動車ショップでのものだった。有難いことにそのどちらもが、今の仕事にとても有益に作用した。とりわけローデムで当時のいわゆるスーパーカーに乗った経験は大きな財産である。

●ドイツから輸入したBMW3.0CSA。隣のマスタングはまだ根強かったアメリカ車の人気モデル

 

 そのローデムでも取り扱うクルマすべてがスーパーカーというわけではない。やはり売れ筋はBMWであったり、メルセデスベンツであったりで、まだ当時はアメリカ車の人気が根強かったから、アメリカ車も時々入荷した。と言っても輸入をしていたのがドイツからだったから、アメリカ車の仕入れは国内に流通しているものだけだった。

 

●横から見ると如何にピラーが細くてグリーンハウスが大きいかがわかる。ただしエアコンが効かず、夏場はまさに温室であった。

 

BMWについては面白い話がある。当時BMWの正規輸入元はバルコムトレーディングという会社。しかし、輸入車にめっぽう強かったはずのカーグラフィックにはバルコムの広告は出ておらず、我々ローデムの宣伝しか出ていなかった。そんなわけだから流通の少なかった大型クーペの3.0CSに対する引き合いはとても多く、そしてよく売れた。そんなある時、一人のバルコム社員が来社して、我々が輸入したBMW3.0CSを売って欲しいとのこと。お客がいるがバルコムには販売車両がない。というわけでクルマをローデムからバルコムに手配することになった。当時は正規も並行もなかったという典型的事例である。

●バルコムの社員が買いに来たのは、マラガと呼ばれたいわゆるバーガンディカラーのモデルだった。

 

 というわけで3.0CSにはよく乗った。とても華奢なピラーで構築されたグリーンハウスを持つ美しいスタイルで、当時同じく導入していたメルセデスベンツ280CEとはデザイン面では雲泥の差。そしてスポーティーさでも雲泥の差であった。どちらも当時のクルマらしく、ステアリング径は大きめだが、メルセデスの方がやはりBMWよりもさらに一回り大きく、そのハンドリングもBMWほどスポーティーなものではなかった。
 会社にあった3.0CSはいわゆるCSAと当時称したオートマチックのモデルばかりで、確かボルグワーナーだったと思うが3速のATで、お世辞にもシャープな印象を持たなかったのだが、ある時マニュアル4速の2800CSというモデルがやって来た。こいつに乗った途端、私はBMWの凄さの一端に触れて、以来BMW党になったのである。その鋭い加速、美しい音色でスムーズに回る6気筒エンジン。当時は日本の6気筒と言えば日産のL型が支配的であったが、それでもBMWのスムーズさには遠く及ばなかった。シルキー6と称された無類にスムーズな6気筒を体験してしまった、というわけである。
 今はメルセデスの6気筒が凄まじく良いバランスを持っていて、BMWもうかうかしていられない状況であるが、70年代のBMWは本当に素晴らしい6気筒を作っていた。

 

●当時としてはウルトラ速かった2800CS。BMWはマニュアルに限ると、当時は思っていた。3.0とはホイールが異なる。

 


 


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